日本における服色の制作業者は2019年(令和元年)時点で3社しかなく[11]、特に福島県福島市にある合資会社河野テーラーは東日本地区でシェア7割、西日本地区でもシェア3割を占める。
日本の中央競馬における服色
日本中央競馬会(JRA)が主催する中央競馬では、前身となる1948年(昭和23年)から1954年(昭和29年)までの国営競馬時代に実施規則が設けられ、ほぼ現行の規則となった[13]。
なお、服色それ自体は明治時代に西洋式の競馬が導入されて以降、横浜競馬場や上野不忍池競馬などですでに用いられていた[14]。
服色の登録・管理
中央競馬に登録のある馬主は、自己の服色を使用して中央競馬の競走に馬を出走させることができるが(後述するように登録せずとも出走はできる)、これを行う場合、競馬法に基づき必ずJRAに服色の登録を行わなければならない[15]。
登録は施行規程第4章に基づき、馬主1人につき1種の服色を登録でき[2]、胴および袖(施行規程上は「そで」の表記)を1組として登録料3,000円を添えて申請書を提出し、登録する[2]。
服色登録後に競争に出走させる場合は、その服色(共同馬主の場合は共同代表馬主が登録した服色)を使用しなければならない[2]。
2017年(平成29年)時点で、中央競馬に登録のある馬主は2382あるが、このおよそ8割にあたる1897の馬主が服色を登録している[10]。
服色の意匠の決定、登録は馬主が行い[13]、服色そのものは通常、競走馬を預託している厩舎が管理する。
中央競馬の服色に使用できる色[編集]
色 | 色名 | |
---|---|---|
施行規則上 | 慣例的な表記 | |
赤 | 赤 | |
桃 | 桃 | |
黄 | 黄 | |
緑 | 緑 | |
青 | 青 | |
水 | 水色 | |
紫 | 紫 | |
薄紫 | 薄紫 | |
茶 | 茶 | |
えび茶 | 海老茶(海老) | |
ねずみ | 鼠 | |
黒 | 黒 | |
白 | 白 |
国営競馬時代に使用できる色は13色に制限され、現在の施行規程でもこれを踏襲する[2][13]。施行規程では「胴若しくはそでの地色又は前条各号の標示には、2色以上を使用してはならない(第36条)[2]」となっており、胴と袖の地色と標示で2色づつ使用できることとなり、合わせて最大4色を服色に使用できる[1]、と解釈されている。
中央競馬の服色に使用できる標示[編集]
戦後すぐまでは標示も自由であり、富士山の標示を入れた馬主などもいたというが[3]、国営競馬時代に使用できる標示については制限がなされ、現在に至るまで施行規程で定められた表示のみが使用可能である。
胴の標示と袖の標示は通常、独立に選択できる(例外あり、後述)。施行規程上に記載はないが、通常胴と袖で1種類ずつ標示を用いる(例外あり、後述)。胴か袖のいずれか、もしくはその両方に標示を入れず、無地とすることも可能である。標示は通常生地に布を縫い付ける、アップリケで表現するが、施行規程上で特に表現の手法について決まりはなく、近年はメッシュ素材など縫い付けが困難な素材が使われることや、勝負服のさらなる軽量化を目的に、標示を生地に直接転写して表現することもある[11][7]。
施行規程で定める標示について[編集]
施行規程上、使用できる標示は「輪」「一文字(胴及びそでに用いる1本輪)」「帯(胴の下部に用いる横線)」「山形(山形、ひし山形若しくは のこぎり歯形の輪又は帯)」「たすき」「縦じま」「格子じま」「元ろく」「ダイヤモンド」「うろこ」「井げたかすり」「玉あられ」「星散らし」「蛇の目又は銭形散らし」の14種類が挙げられ[13][2]、輪やたすきの本数・形状から来る組み合わせなどから、無地を含めると実質的に23種類となる[13]。しかし、一部新規で登録を受け付けていない標示も存在するため(後述)、事実上用いる事ができる標示は21種類となる。
施行規程では使用できる標示のほか、標示の最小限の寸法(幅や直径)を定めているが[2]、具体的に図形をつける位置や、個数までは定めていない[3]。このため見栄えの観点から、制作にあたっては規程の範囲内で色覚上太く見える色を細く、逆に細く見える色を太く表現したり、直線の標示を体に合わせてカーブして裁断するなど若干の調整がなされている[8][7]。
なお、以下に示す標示の例は一般的な例である。
輪・一文字・帯[編集]
「輪」は複数本を入れることができ、本数については決められていないものの、一般に最大3本である。特に「一本輪」を胴と袖の両方に同一の色で用いた場合は、「一文字」と呼ぶ。「帯」は施行規程上、「胴の下部に用いる横線[2]」となっているため、胴にのみ使用できる。
山形(山形、ひし山形若しくは のこぎり歯形の輪又は帯)[編集]
「山形」のうち「山形の輪(以下山形輪)」も「輪」と同様、一般に最大3本である。特に「山形一本輪」を胴と袖の両方に同一の色で用いた場合は、「山形一文字」と呼ぶ。
また、幅の最小限以外の決まりは施行規程にないため、山の数については特に決まりはない[2]。
「のこぎり歯形の輪(鋸歯形、以下鋸歯形)」を使う場合必ず胴と袖に跨る形となる。「鋸歯形」を用いる場合は袖に限って「鋸歯形」と同一色の輪(一本輪・二本輪)を併用することができ(後節の例も参照)、胴あるいは袖のいずれかの地色を鋸歯形と同じ色にすることもできる。
たすき[編集]
「たすき」は施行規程に明文化されていないが、胴にのみ用いる。2本を交差させてかけ、「十字たすき」とすることもできる。
その他[編集]
地色と標示の組み合わせ上の制限[編集]
施行規程には定められていないが、地色と標示の組み合わせには一部制限が存在する[13]。
- 地色と標示の色の組み合わせにおいて、似通った色(青と紫、青と黒など)は不可。
- 「元ろく」「うろこ」を袖のみに入れる場合、胴は無地。
- 「星散らし」を胴と袖の両方に使う場合、標示の色は基本的に同一。胴と袖で地の色と標示の色が入れ替わる逆色のみ可。
新規登録が制限されている標示[編集]
現在登録されている服色と同一もしくは紛らわしい服色は登録できないとされているが[13]、親族の複数人や法人が同時にそれぞれの名義で馬主になっている場合など、それぞれで若干変えただけの服色や地色と標示の色を反転させて登録しているケースもある。
施行規程には定められていないが、「帯」については、「輪」と紛らわしいことから、新規での登録は受け付けられておらず、2017年(平成29年)時点で使用している馬主もいない[13]。
服色の文字による表現[編集]
レーシングプログラム上など、文字で服色を表現する場合、次のように表記される。表記の上では各項目をコンマ、読点や中黒で区切って1行で記す。
表現における要素[編集]
文字で服色を表現する場合、次の要素を用いる。なおここで用いる略記は当記事内における便宜上のものである。
- 胴の地色…A
- 色のみを表記[注釈 1]。
- 胴の標示の色…B1
- 胴の標示の種類…B2
- 胴が無地の場合とD1、D2がある場合は表記なし。
- 袖の地色…C1
- 地色がAと同一の場合は省略するが、B2が袖にも使用できる標示で、袖が無地の場合はC1のみ表記する。
- 袖の標示の色…C2
- 袖の標示の種類…C3
- 袖が無地の場合と、D2と併用できない標示種類の場合は表記なし。
- 胴と袖に跨る標示の色…D1
- 胴と袖に跨る標示の種類…D2
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